2013年1月29日火曜日

よばなし

昨年の夏から、娘が美大の予備校に通っている。
娘との会話の中で、時折思い出す先生がいる。

30年以上も前なので、そろそろ時効かなと。

デザイン科のある高校に通っていて、門下生だったのだけれど、個性豊かな生徒に負けないくらいの先生ぞろい。

その中で、女生徒から人気だった先生と、現在娘が世話になってる予備校の先生の印象がかぶるらしい。もちろん、赤の他人だけど。

私はとりわけ、その先生の熱狂的ファンではなかったけど、教師らしからぬ雰囲気で、クールで謎めいてて、好きな銅版画の担当だったというのもあって、慕っていたと思う。

卒業後、希望のデザイン室に就職できたものの、イメージと違い戸惑う時期があり、半年くらい経ってから久しぶりにデザイン科の職員室にふらりと寄ってみたことがある。

そこには親しかった先生や、ひとつ上の先輩がいて、悩む自分にアドバイスをしてくれた。在学当時も、色々お世話になった人たちだった。

そこに、見知らぬ先輩もいて、他の先輩たちが帰ったあとも、ひとりでぽつんと職員室の椅子に座ってた。

私が帰ろうとすると、一緒に帰ろうということになり、ちょうど方角も一緒だったので、電車も一緒に乗った。

ストレートの黒髪と、色の白さが際立って、もの静かできれいな女性だなあと思った。

話すうち、家に来ないかと誘われ、ほぼ初対面だというのに、これといって断る理由もなく、お邪魔することになった。
そこで、もう読まなくなったのでいらないの。という文庫本を何冊かいただいた。

そして、先生と深い仲になってね。という彼女の告白を聞いた。

あとで知ったことだけど、先生はそのことがきっかけで、学校を辞めてしまったらしい。
今思えば、彼女は職員室で、先生が来るのを待ってたんだろうと。

それきり、その先輩とは会うこともなく、名前すらおぼろげな記憶だけど。

なにかのたびに、不思議な記憶としてふと思い出すことがある。

誰かに秘めたる思いをそっと打ち明けるときに必要な、ほどよい距離感ってのが、あるんだろうか。と。









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